ローマ人の物語〈9〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(中) (新潮文庫)

「40にして起つ。」
ローマ人の物語シリーズの最高潮と思われるカエサルの活躍の話がつづく。前々巻の共和制ローマの苦悩の話とは対照的に読んでいて素直に楽しい。クラッスス、ポンペイウスとの三頭政治で政敵を退けていく。高校世界史でならった三頭政治の内容を初めて理解することができた。カエサルは、ローマ社会の公益のための行動として世論の支持を得つつ、カエサル自身の私利にもしっかりつなげている。現代の利益誘導型政治、利権と同じだ。ガリア戦記のくだりも面白い。国内政治に対応しながら、戦争を進めていく。決して政治も、戦争もスムーズには行っておらず、一進一退を繰り返しながらカエサルの狙た方向へ向かっていく。大器晩成型のカエサルだからこそ、その先の成功を信じて、気長に取り組むことができたような気がする。

・一つのことを一つだけの目的ではしなかった。とはいえ、このやり方が成功するのは、やる側がいずれの目的も信じているからである。

・カエサルは、プロパガンダの重要性を、当時では他の誰よりも理解していた男だった。なぜなら、「人間とは噂の奴隷であり、しかもそれを、自分で望ましいと思う色をつけた形で信じてしまう」からである。