遠野物語

 口語訳で読みやすいです。簡単な感じにも読みがふられていてちょっと読みずらいところもありますが、読み進めるうちに慣れました。沢山の話が出てきますが、一つ一つは短く、中には2行で終わるものもあります。伝承の記録といった感じです。柳田邦男が、自ら旅をして実地調査で集めた記録で、これを、整理し体系化することで民俗学を作っていったんだなあと感慨深く読みました。更に、保坂さんがラジオで解説していた柳田邦男の信念である「一人の英雄が歴史を作るのではない。常民の人たちの生活が歴史を作ってきた。」ということの意味が少しわかったように感じました。
 内容は、家庭の事情や問題を示唆する記述と、神隠しなどが一緒に出てきたりします。封建的な村社会の中で、問題になる現実を、神隠しや昔の伝承でオブラートで包んで表現して納めてしまう暗黙の了解があったのではないか、と思いました。村社会のコピーと言われる会社組織も、一身上の都合による退職とか、左遷を栄転とか、似たような暗黙の了解があるように感じます。

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口語訳 遠野物語 (河出文庫)