大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇

情報の重要性に加え、
戦争を指導した軍人、特に大本営中枢のごく一部の参謀たちの敗戦の責任も認識させられる。
情報を軽視し、戦略もなかったのは日本軍欠陥であるが、それは今の日本の政府や企業にも当てはまる。
そうすると、単に一部組織の欠陥ではなく、日本の欠点の可能性がある。

1つは国の大きさの違いと感じた。
例えば、中国は土地が広く、国民も多いから、変化を一気起こすことが困難である。変化させようとすると長期的視点で計画を立てることになる。その計画が戦略になる。
一方、日本は国土が狭く、多様性も低いので1方向に世論を向けやすい。そのため、短期的な計画で「勢い」が重要になる。

例えば、明治維新もその特性がよく出ている。薩長は攘夷、倒幕と時勢で方針をかえ、勢いで倒幕を果たしたあとは、国の方向性を一時見失う。倒幕後の戦略がなかったのである。大久保利通が欧米視察で得た富国強兵というキーワードをもとに長期計画を描き、事なきを得る。場当たり的になっている面がいなめない。

戦争の仕方にも現れている。日本軍は奇襲が得意と言われていた。そもそも、長期的な視点が必要な勝つための戦略を描くのが苦手なのである。戦略に基づいた戦争準備ができていない状態で、戦争をしないといけない状況に陥てしまうから、短期的に優位に立てる奇襲に頼らざるを得ないのである。

国内は短期的な視点で対処できるが、世界は長期的な視点がないと対処できない。このバランスがとれていないのが原因だと思う。

長期計画は将来どうなるかわからないから考えても無駄、という考え方をされがちである。だから目の前のことを一生懸命やれば良い、と続く。
だから同じ過ちを繰り返すのである。
長期計画は難しいから諜報(インテリジェンス)、情報が重要になるのである。
情報をもとに長期計画、戦略を立て、長期計画が実現するよう短期計画を立て実行するのである。

情報の軽視は、戦略が無いことに起因し、戦略を立てる長期的な視点が無いのは国が小さいことに起因している。

なんだか石山湛山の小日本主義のようになってしまった。

そのような社会の中で、どう行動していくかが重要であり、その参考になるのが石山湛山だと思う。
長期的な視点をもってブレずに行動する。自分もそうありたい。

以下、読書めも。

・制高点の占領というクラウゼヴィッツの原則の奥の定理を理解し、新技術の飛行機で制高点を作り占領する、すなわち制空権をとるという考えを構築した。→新しい考え、発想の転換も経験や思考時間にある程度比例すると考えると人口の多い大国有利である。

・制空権を維持するため、飛行機の性能向上に努め、飛行士や飛行機の継続的な供給体制を構築した。

・寺本中将の必勝六法「制空の絶対」、「技術で作る制高」、「線と点」、「戦場の選定」、「面の防空」

・「敵情判断で最大の難事は、言い切ることである。しかも情報の判断をする者には、言い切らなければならない時期が必ずやってくる」

・「情報とは相手の仕草を見て、その中から相手が何を考えているかを知ろうとするものだ」

・情報はまず疑って真偽のふるいにかける必要がある。

・中枢の考えがソ連国内のどこかに何らかの形で徴候としてでていないか虎視眈々と収集して分析する。

・「現地を知っているものは強い」

・「俊才は絶対に勇者にあらず、智者も決して戦力になり得ず」

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)