戦前、戦中、戦後の帝国陸軍の将校クラスの人たちの自伝、回想録の紹介がされている。さらに、保坂さんが自ら行った軍人のインタビューでの印象も含めて、著作に対する軍人の思い、裏事情の推測が加わる。実際に回想録が読みたくなった。
まえがきは、戦後日本が軍人の戦争責任を追求しなかったことに対する考察から始まる。東京裁判が行われたこと、昭和天皇に責任が及ぶこと、一億総ざんげが受け入れられたことの3点をあげる。私は加えて公職追放後に、政治家などの特権階級に復帰する旧軍人いたこと、日本遺族会が強力な圧力団体として存在したことも大きいと思う。最近は旧軍人や遺族の高齢化が進み、政治力が低下していることが、戦争責任の議論がここ数年よくされる要因だと予想しています。
また、同じ失敗を繰り返さないために、歴史を後世に伝える回想録の重要性を述べ、回想録を残さなかった東條首相らを批判もしている。歴史に大きな影響を与えたものの責任のとり方について考えさせられました。
保坂さんは、大戦略(軍事学)を持っていた石原莞爾を評価しており、軍事だけでなく、思想や哲学、経済、科学などを幅広い知識が必要であることを述べている。情報参謀として活躍した堀栄三は著書の『大本営参謀の情報戦記』の中でやはり幅広い知識を身に付けることの重要性を指摘しているという。これを読んで思ったことは、組織運営との矛盾。大きな組織を効率的に動かそうとすると、同じ考えの人だけで都合の良い情報でストーリーを描いた方が楽だということ。幅広い知識は必要ない。いわゆる組織の過剰最適化、タコツボ化、サイロエフェクト。現在の会社組織でも内包している問題だと思う。自分も意識して行動したいし、読書を続け、幅広い知識をつけていきたい。
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