昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

私の日米開戦の見方は、
大きく見れば、重商主義の進展により分け合う植民地が減り帝国間の対立が生まれることで至った戦争。
ミクロで見れば、外交の失敗と、軍隊(統帥部)の暴走を止められない制度欠陥により実際に戦争に至った。

本は、戦争突入後の話。
昭和16年に戦争経緯を、仮の内閣でシミュレーションした結果、日本必敗となった。
結果論から言えば、「シミュレーションでも負けるとわかっていたのに開戦した」と、当時の指導者を糾弾したくなるが、
原爆投下などの大惨事が起きることがわからない段階で、開戦しなければクーデターが起きるかもしれない、という足元の危機迫る状況下で開戦しないという決断は難しいようにも感じる。
引き際も難しい。結局、強大になりすぎ日本政府が制御できなくなった日本陸軍をアメリカ軍が弱体化してくれて、ようやく終戦工作が可能になったと見ることもできる。
それと、敗戦後の要人の身の処し方も興味深い。帰農が良い。
責任が求められる立場になったとき、いざというときの自分の身の処し方も考えておかないといけないし、本来、そのような立場にあるのは一時的なものだと認識して職務に当たる必要があると強く思った。

読書メモ

・決断の内容より「全員一致」のほうが大切だった。今でも続く日本的意思決定システム。
・理念や思想を持っていれば、制度を破ることができるが、職分で生きている人はそれがきない。
 →アイヒマンも職分に生きていた。理念や思想を持つことが重要。
・彼らは早い時期に日本必敗を予想していたがその見通しを何かの算段に生かそうとした様子がない。
 「勢い」に押し流されていくしかない。→日本という組織の一部で生活している限り、組織の方針に反する行動はとりにくいということか。白洲次郎のように戦争が始まったら田舎に隠遁し、戦争が終わるまで、政治、事業から離れる、というのが組織的災害を免れる方法か。一休さんの堕落した仏教をかえるために30年待つというのと似ている。

・実社会10年目は幅広いバランスのとれた判断力を持つ。社会を知らない学生のように性急で観念的でもないし、逆に熟年世代のような分別盛りでもない。
・立場を超え、数字を含めたデータに執着し、正確な見通しを出した。
・その報告をもとに誰が意思決定を下すかが重要なポイント。
・50代、60代の組織の代表者はしがらみがあって決断できない。
・日本人には歴史を研究して現在に生かすという発想が薄い。
・アメリカは歴史的な記念日にあわせて工程表を作り着々と占領政策を進めた。自分たちが先人が積み上げてきた歴史の中にいて、これからの歴史を作り上げる一人なんだという意識がある。
・A級戦犯の処刑日は天皇誕生日の12月23日
・日本の意思決定に欠けているのは今も昔もそういうディテールの積み重ね。ディテールにこそ神が宿る。ディテールを積み重ねれば真実にたどり着く。