「NHKカルチャーラジオ 科学と人間 電池が起こすエネルギー革命」を聴講。旭化成でLiイオン電池を開発した吉野彰さんの開発秘話と、製品開発の経験から今後のEV社会到来を予想されている。研究計画策定の参考になる。
予想されている自動運転EVの登場に加え、ワイヤレス給電や電車の線路の開放などによる給油、給電作業の消滅、ガソリンスタンドの減少も、エンジン自動車の消滅を加速させると感じた。高速道路や線路を走れば走行しながら給電されるように新たな直流送電網を作る。AIが行先とバッテリー残量から給電できるコースを選ぶ。これにより給電作業が無くなる上、航続距離の問題も解決する。そしてこの直流送電網と交流送電網を併用する送電網を作ればよいのではないか。
夢ではなく、技術に基づいた、現実的な未来社会を想像することができた。
「新規事業を阻む、3つの関門」
1991-92年Liイオン電池出したが売れない時期が数年続いた
開発の3つのステージ
探索研究5年 Liイオン電池原型 基本技術
開発研究5年 世の中に出せる製品に仕上げる
マーケットを立ち上げる研究5年
この3つクリアしないと製品にならない。
新規事業立ち上げには、3つの関門「悪魔の川、死の谷、ダーウィンの海」がある。ゼロから何かを作ってマーケットができるまでの辛苦を表す言葉。事業、ベンチャー、新しく始めることなんでも。
舞台はアメリカ、ゴールドラッシュ。東海岸から西海岸へ。西部開拓史をイメージした言葉。
悪魔の川(ミシシッピ川) 基礎研究で新しいものを生み出す苦労。ポリアセチレンから始めた基礎研究
死の谷(グランドキャニオン) 新しい技術を世の中で使える技術にする。事業化のための開発研究
ダーウィンの海(ガラパゴス島への航海) 世の中に出してもなかなか売れない。工場立てたけど全く売れない時期が数年間続いた。1995年に立ち上がった。
「関心があるけど買いません」というのが、ダーウィンの海の特徴。機が熟すまで待っている状態。事業をやめる判断ができないから厄介。
第2世代の携帯はアナログからデジタルになり、IC駆動電圧が5Vから3Vへ変化したのが契機。既存の電池から、Liイオン電池へかえることで使用本数が3本から1本になった。
1995年から世の中がIT社会へ
新しい製品でると研究開発競争6,7年激しく起きる。
勝ち組、負け組がでる。特許出願件数が横ばいになる。
2000年をピークに一時停滞したが、その後、増加に転換。
第1ピークはIT機器関連メーカーが多く出願。IT革命を示している。モバイルIT社会実現。
第2ピークは自動車メーカーが多く出願。エネルギー、環境の分野で変革が起きつつある。
変革がいつどのように起きるか。
変革が起きるのは、事業化に必要なQCD(Quality、Cost、Delivery)の前提条件、価値観が変わるとき。
写真は、紙に印刷してアルバムで保存するものから、デジタルで保存してスマートフォンで見たりメールで送ったりネットで共有するものへ変わった。デジカメが発売された直後は、銀塩写真は高精細を差別性として生き残っていた。しかし、シャープ携帯の写メールが出て写真の前提条件が変わった。写真が、デジタルで共有するものになった。そのため、銀塩写真が一気に無くなり、写真フィルムも不要となった。
今後、無くなるものはエジソンの時代に発明されたものになる。
白熱電球→LEDライト
エンジン自動車→電気自動車(EV)
交流送電→直流送電
人の価値観の変化により製品が消滅する。
エンジン自動車の消滅は、どのような価値観の変化により起きるのか?
無くなるタイミングは写真フィルムと同様、価値観が変わったときになるはず。
EVは2025年以降、普及が進み、エンジン自動車が無くなる可能性が高い。
カリフォルニア州のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制が2018年から強化される。
2018年からエコカーからハイブリッド車(HV)が外され、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)が対象になる。
ZEV規制で、カリフォルニア州で販売する自動車のエコカーの割合が決められている。達成できないと1台あたりの罰金が科せられる。そして、年々割合が高く設定されている。
イギリス、フランス、ドイツ、中国などが内燃機関禁止の方針を打ち出している。
更に、AIの自動運転の学習が進み、2025年ごろ使い物になるのではないか。
2010年から学習中。2017年時点で7歳ぐらいの判断ができる状態。
自動運転のEVの登場により、車を所有しないという価値観の変化により、エンジン自動車はなくなる。