びんぼう自慢

若い時分は本当に貧乏だったことが書かれており、冷静に読むと惨めで悲しくなるが、古今亭志ん生の軽妙な語りで面白い昔話へ変換されている。貧乏していろいろな経験をしたことも芸の肥やしになっているのが良くわかる。それと戦中、敗戦時の体験談も貴重。

・余得てえ奴がつく。

・子供の教育は環境が重要。おやじが厳しいと家に寄り付かない。表飛び出すとまわりが良くない。下町の子は大人の悪いとこばかり真似する。道楽は一度覚えるとやめられない。

・田舎にいくと落語をみたこともきいたこともない人がいる。
 →ラジオ、テレビの普及が落語の普及に重要だったことが伺える。

・三道楽。呑む、打つ、買う。

・余興だって慰問だって、こういうときは、まるで関係のないはなしをやるに限ります。そういうのが喜ばれます。

・「線香花火になるな。」
 芸人が若い時分からあわてて売り出すなんぞはあんまりいいことじゃない。はじめは威勢が、くたびれるのも早い。
 力がつくにつれて、だんだんと売れてくるってえことでないと、決して長続きしません。

・あれだけの地位になったって別に肩で風切って歩くなんてことをしないのは、やっぱり満州時代のあの下積み時代の苦労のたまものでしょう。人間てものは、いろいろと苦労した者のほうが、そうでないものよりなんたって味がありますよ。

・人間一生が勉強でございます。これからもどうぞよろしくお願いをして、この辺で失礼させていただきます。