【書評】吉村昭昭和の戦争 1 開戦前夜に

著者の複数の作品、零式戦闘機/「零式戦闘機」取材ノート/大本営が震えた日/ 戦記と手紙、が収められている。

「零式戦闘機」は著書があるのを知っていたが今回初めて読んだ。

まず冒頭のつかみがよい。緊迫した世相の中、航空機工場から牛車。疑問「?」に引き寄せられる。長期連載漫画の特徴として、読者に前半で主人公に「?」を持ってもらう、というのを聞いたことがある。ドラゴンボール孫悟空のしっぽとか。

興味深ったのは、世界水準以下だった日本の飛行機が、戦前に世界トップになる過程。上海事変で国際関係が悪化して国産が求められ、さらに海軍からの高い要求に答えるために世界も試していないチャレンジングな技術導入。だれもやっていないことをするからオンリーワン=ナンバーワンになる、という基本を見ているよう。

余談だが、戦前の化学分野のプロジェクトはうまく行っていない。
国家予算の26%をつぎ込んだ「人造石油」計画
この差は、製品開発と技術開発の違いではないか。飛行機は製品開発に近く、人造石油は技術開発に近い。技術開発で技術確立してから製品開発へと進む。

さらに化学産業の製品化はプラント設計・建設も簡単に短期間でできるものではない。機械、電機産業と化学産業の違いも原因となっていそう。

時間があるときに調べてみたい。
論文要旨「開戦決定と人造石油―何故、日本に人造石油工業は成立しなかったのか―