【書評】孤独の歴史


孤独は必要なものだが社会との関わりとのバランスが問題になる。孤独に対しどのように考えられ対応してきたか過去の論考が説明されていく。

昔は孤独=暇な時間=良くない行いを行う隙が生まれる(反社会的活動、反社会的思想、不貞)、という考えでいかに有意義に時間をつぶすか考えられてきた。金持ちの寄附活動もその1つ。喫煙や郊外でのハイキングが勧められた。

そして現代のデジタル社会は監視、トラッキングされ完全な孤独を手に入れるこが難しい。加えてネット上でのつながりは薄い。

1979年に発売されたウォークマンは娯楽の孤独化を一気に進めた。自分だけの音の世界に浸れる。iPhoneはその延長である。

戦争は人々に目的を与え、総力戦のため役割が与えられたため、孤立が解消された。戦後、その社会的役割が無くなったため、喪失感と孤独を感じる人が多く生まれた。

孤立が増えたのは2008年の金融危機以降の物質面の格差と財政圧迫のため。個人と集団の豊かさに陰りが見えると、孤立を抑えながら孤独を楽しむことが次第に困難になっていく。

狭い住宅、娯楽や移動に使えるお金の減少、貧困は孤独に直接影響を与える。

人々が不安を覚えているのは、人間関係のあり方について自分の意志が及ばなくなることである(孤独を選べるか) 。死別、個人的な人間関係の長期的失敗、公的・私的な欠乏状態によって望んでいた結果が得られなかったときに孤立が始まり、大きな苦しみがそれに続く。