【書評】曠野の花 新編・石光真清の手記(二)義和団事件

日露戦争前の満州における陸軍の石光真清(まきよ)の諜報活動の手記。義和団事件後も満州に駐屯し実効支配を着々と進めたロシアの動きが克明に描かれており、日本の焦燥感が伝わって来る。陸軍からの指令は「ハルビンに潜入し調査しろ」というだけで手段は自分で考える。あらゆる手段を考え実行していったら、冒険旅行みたいになった、という感じ。仕事に似ている。

多くの日本人が出稼ぎに出ていたことに驚かされる。女郎屋も多く進出し多くの女性がだまされて働かされていたことも描かれている。勢いのあった明治期をなつかしむ向きもあるが、やっぱり負の面も大きい。本手記も英雄譚過ぎてノンフィクションには感じられない。書けないことも、事実と異なるこもあったはず。何だか本に入り込むことなく客観的に読んでしまった。

・人間の運命というものは後になってかれこれ申すことができますが、先だって知ることができないとなれば、そんなものを考えることが誤りだと思ってよいでしょう。