統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ

統計データをもとに団塊ジュニア世代が高齢者となっている2050年ごろの高齢者の年金と就労状況のメインシナリオを示してくれている。年金は現状から2割程度下がるのがメインシナリオ。思ったよりももらえるんだ、というのが第一印象。一部で「年金破綻して年金もらえなくなる!」というような悲観的な意見も聞くが、根拠がないことがわかった。一方で、支給年齢は上昇するし、生活レベルを下げたくなければ不足分、働き続けなければならない。でも、現在すでにそうなっているし抵抗感はない。肝は、働き方改革の推進による高齢者、女性就労者の拡大。現在の国、会社の取り組みが間違っていないことを説明してくれており、前向きになれる本でした。文章も必ず最後に結論が簡潔にまとめられており、読みやすかったです。

・2008-2018年で40代の中堅男性社員のみ賃金低下。女性の社会進出と高齢者増加により役職が簡単にまわってこなくなったことによる。高齢者雇用は今後も増えるので中堅社員の賃金低下は今後も続く。→実感とあっている。シニア雇用で役職ついている人いるし、30、40代で管理職に昇格する人が減っている。会社が賃金に払える総額はだいたい決まっているからシニア雇用が増えれば他の社員が割を食うのは当然の成り行きである。

・失われた20年の間、平均賃金は上がっていないが賃金総額(実質雇用者報酬)は上昇を続けている。経済は成長を続けている。今後も賃金総額は増えていくし、高齢者労働が増え、平均賃金も上がらない。→ディスカウントストア、100均、マックの伸張理由がわかった。今後も低コスト消費はつづくということね。

・未婚非正規の定着により今後、低賃金高齢者が増え生活保護受給者が増えていく。

・消費者物価指数は為替と相関がある。日銀の異次元緩和による円安誘導は物価上昇を引き起こし人々の生活を苦しくしている側面もある。

・経済が成長しているのに実感が無いのは、少子高齢化による負担増が影響している。

・退職金減少は続いており、現在の中堅社員が現在の高齢者並みの資産を築くのは難しい。

・現在の低成長を前提にした場合、2050年の年金月額支給額は18.9万円。現状水準22万円から3万円下がる、というのがメインシナリオ。

・75歳以上の後期高齢者の医療費上限額は5万7600円。医療費を過度に心配する必要はない。75歳までが老後資金ひっ迫しやすい。75歳以降は資金不足に陥りにくい。

・引退年齢の引き上げの効果大。年金支給月額が3万減っても、75歳引退であれば必要は貯蓄額は1200万円。

・年金の将来像。年金財政が先細ることで支給額が減少する。この穴埋めのため、多くの人が年金の支給開始年齢を繰り下げる。繰り下げた年齢までは生活基盤確保のため働く。これが確実に訪れる。

・フリーランスは高齢者に多い。シルバー人材センター登録もフリーランス。組織の中で働くことより、自由な職場で働きたい、というニーズが高齢者には多い。

・専門技術職の高齢者比率(65歳以上)は高くない。税理士の36.2%が最高。次が宗教家の33.7%。税理士、弁理士などの文系技術職は歳をとっても続けられるが、多くの技術職は競争も激しく、日々の研鑽も必要なので高齢者には厳しいのではないか。

・急速な仕事の代替は起こらない。IT革命時もホワイトカラーの仕事が無くなると言われたが無くなっていない。ゆっくりと代替が起きていく。自動運転が普及しタクシー運転手の仕事が無くなると言われているがかなり先の話。将来性が低いため若年層がなりたがらず、供給が減っている。将来性をそこまで気にしなくて良い高齢者こそつくべき仕事と言える。

・「生涯現役社会の実現」と「税・社会保障の改革」はほぼ同じ意味を持つ。第2次安倍政権は、税率の引き上げや社会保障の給付水準引き下げなどの痛みをともなう税・社会保障の問題解決を封印し、生涯現役社会の浸透を目指した。これが功を奏し、長期政権が実現した。

・生活レベルを下げ、現場労働を中心に生活してくことで年金生活できる。自分のニーズに合わせて専門技術職を目指したり、貯蓄をしたりすればよい。