野生化するイノベーション: 日本経済「失われた20年」を超える

イノベーションの良いところと悪いところを整理し、国、会社、個人がどう向き合うかまで提言している。まとめると、イノベーションが起きやすい条件(ヒト、モノ、カネの流動性)があり、好条件を求めて移動し、行き過ぎると貧富の格差など負の側面が大きくなる、ということ。アメリカは、巨額の国防費で、インターネットやGPSなど大きなイノベーション生み出し、産業がそれを使って小さなイノベーションを起こしていく。雇用の流動性が高く、失業率は日本より高め。巨額の国防費と社会不安増というコストを払ってアメリカは今のイノベーションを維持している。一方、日本は、失われた20年でイノベーションへのお金が細り、雇用の維持、既存システムの維持を続けた。維持を担っているのは、イノベーションの主体となる会社。コストを払う会社はリスクを取りにくくなっている。雇用の流動性の低いままで、ますますイノベーションが起きなくなった。という流れ。
 個人の向き合い方としては、今後、流動性が高まっていけば、ビジネス・チャンスが増えるので、チャレンジを続けること。今の所属組織の強みが失われていく可能性も高いので、広く通用するスキルを身につけていくこと。この辺の提言は昔から言われていること。実行が問われている。

・イノベーションのポジティブな効果はゆっくり薄く広がっていく。初期は特定の人のみに利益をもたらすので抵抗運動が大きくなる。

・イノベーションは関連するイノベーションが芋づる式に広がっていく。

・日本は新規参入が少ないためラディカルなイノベーションが少ない。何十年も企業の顔ぶれが変わらないところに大きなイノベーションは起きない。

・日本人の好きな、コダックと富士フィルムの比較による、クリステンセンのイノベーションのジレンマの説明は、適切ではない。アメリカと日本の企業環境の違いが考慮されていない。アメリカは雇用の流動性が高いので、企業自体は抜け殻で、有望な事業はスピンアウトなどして他の企業として成長していく。それがコダック。

・イノベーションは官僚的な組織からは生まれない。直感だけで予算を割り振られることは無い。そのため、企業の中央研究所は無くなり、他の野性的な場所からイノベーションを取り入れるようになった。ベンチャーキャピタルとか。

・規制は保護をなくすと、自由競争で貧富の格差拡大する。貧しい人の方が多いので民主主義では保護主義的、全体主義的な人が選挙でえらばれ、政治家になる。ブロック経済が進み、世界大戦へとつながっていく。